なぜ「地方移住はやめとけ」と言われるのか

SNSやブログでは、地方移住の失敗談や後悔の声を目にすることがあります。「仕事が見つからなかった」「地域になじめなかった」「思っていたより不便だった」といった内容が中心です。こうした声が積み重なり、「地方移住はやめとけ」という言葉になって検索されていると考えられます。

不動産メディア「イエコン」を運営する株式会社クランピーリアルエステートが、地方移住経験者276人を対象に調査しています。移住をやめて都市部に戻った人のうち約7割は、移住後3年以内に戻っています。ただし、これは同社による自主調査です。参加者の選び方や、移住経験者全体をどの程度代表しているかは明記されていません。

一方で「移住してよかった」という声も多い

  • 内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)が2021年11月に実施した「東京圏から東京圏外への移住者の意識・行動に関するアンケート調査」では、東京圏に戻る予定が「ない」と回答した層が一定数を占めており、移住後も定住を続ける人が多い傾向がうかがえます。
  • 同調査では、新型コロナウイルス感染症の拡大を機に「東京圏外での暮らしを望むようになった」と回答した人も一定数おり、移住後の生活に前向きな評価をしている層が一定数存在することがわかります。
  • 「やめとけ」という声だけがSNS上で目立ちやすい一方、実際には移住後も定住を続けている人が多い点はバランスよく見ておく必要があります。

失敗する人に共通する3つのパターン

感覚的な失敗談を集めるだけでは、対策には結びつきません。ここでは、移住後に後悔しやすいケースを3つの構造的なパターンに整理します。

  • 仕事・収入面の準備不足:移住先の求人状況や産業構造を十分に調べないまま移住し、想定していた収入を得られないケース。地方は都市部に比べて求人の選択肢が限られる地域が多く、事前に自治体の就業構造データや求人情報を確認しておくことが欠かせません。
  • 生活の不便さへの認識不足:公共交通機関の本数、日常の買い物環境、医療機関へのアクセスなど、都市部では当たり前だった生活インフラが移住先では大きく異なる場合があります。車移動が前提の地域かどうかは、事前の下調べで把握できる部分です。
  • 地域コミュニティとの関係構築を軽視したケース:地域の行事や自治会活動への参加度合いは地域差が大きく、移住前にイメージしていた距離感と実際の関わり方にズレが生じることがあります。総務省が所管する地域おこし協力隊制度でも、隊員が任期途中で辞める要因として「地域との関係」が最も多いという調査結果が報じられており(日本経済新聞、2020年7月報道)、地域おこし協力隊の隊員でも着任から1年以内に約25%が退任しているという報道もあります。これは移住全般に共通しうる示唆と言えます。

移住してはいけない、と感じやすい状況

「この地域に移住してはいけなかった」と感じやすいのは、特定の地域そのものに問題があるというより、決め方のプロセスに原因があるケースが多く見られます。

たとえば、移住支援金や補助金の金額の大きさだけで移住先を決めてしまった場合です。支援金は移住のハードルを下げる有効な制度ですが、金額の多寡と、その地域での暮らしやすさは必ずしも一致しません。仕事の見つけやすさや生活環境との相性を優先度の上位に置いた上で、支援制度は判断材料の一つとして扱うのが望ましいと考えられます。

また、お試し移住を経験せずにいきなり本移住してしまうケースも、後悔につながりやすい状況の一つです。旅行や短期滞在で見える町の姿と、実際に暮らす中で見える姿には差があります。数日から数週間、実際にその地域で生活してみることで、事前には気づけなかった点を発見できる可能性があります。

暮らし方ごとに後悔しやすいこと

移住の目的や家族構成によって、後悔しやすいポイントは異なります。ここでは代表的な2つのケースを紹介します。

  • 子育て世帯(教育移住を含む):学校の規模や教育方針、通学手段が想定と異なっていたというケースが見られます。移住先の学校選びは、学年の切り替わりタイミングと合わせて早めに情報収集しておくことが重要です。
  • テレワーク移住者:移住前にネット環境や仕事場の確保状況を十分に確認せず、着任後に通信速度の問題や作業環境の不便さに直面するケースがあります。移住先のインターネット回線の対応状況は、事前に自治体や地域のプロバイダに確認しておく必要があります。

後悔しないための対策

失敗パターンを知ることは、そのまま予防策につながります。ここでは、移住前にできる具体的な対策を紹介します。

  • データで移住先を確認する:人口動態、就業構造、世帯構成といった統計データを見ておくことで、感覚だけに頼らない判断ができます。指標別のランキングページも判断材料の一つとして活用できます。
  • お試し移住・移住フェアを活用する:自治体が提供するお試し住宅や移住体験制度を利用し、暮らしのイメージと実態のズレをすり合わせておくことが有効です。
  • 移住の準備を段階的に進める:情報収集から実行までを段階を踏んで進めることで、勢いだけで決めてしまうリスクを減らせます。

実際に体験してから決める

  • お試し移住の制度・費用・申込方法をまとめたガイドも用意しています。移住を決める前に、実際の暮らしを体験してみることをおすすめします。

「移住してはいけない県ランキング」という表現の実態

検索すると「移住してはいけない県ランキング」といった表現が目に入ることがあります。しかし、特定の都道府県や市区町村を名指しで「移住に向かない」と断定できるような公的な調査や統計は確認できていません(要確認)。

地域ごとの向き不向きは、移住者本人の目的(仕事、子育て、老後の暮らし方など)によって大きく変わります。同じ地域でも、ある人には最適な選択肢になり、別の人には合わないということが起こりえます。ランキングという形式そのものよりも、自分の目的に合った指標(求人の多さ、子育て支援の手厚さ、医療アクセスなど)で地域を比較することが、後悔を避ける上で実質的に有効な方法です。

移住前に相談できる窓口

一人で判断に迷う場合は、移住相談の窓口やフェアを活用するのも一つの方法です。自治体の移住相談員や、移住関連の相談イベントでは、地域の実情を直接聞くことができます。

移住が具体的に決まった段階では、引越し業者の比較検討も早めに進めておくと、費用面での見通しが立てやすくなります。

よくある質問

  • Q. 地方移住は本当にやめた方がいいのですか?
    A. 一律に「やめた方がいい」とは言えません。準備不足のまま移住した場合に後悔しやすい傾向がある一方、内閣官房の調査では移住後も定住を続けている人が多いというデータもあります。ご自身の目的と移住先の実情がどれだけ合っているかを、事前に確認することが重要です。
  • Q. 後悔しないために一番大事な準備は何ですか?
    A. 特に重要なのは、仕事・収入面の見通しを立てることと、お試し移住などで実際の暮らしを体験しておくことです。感覚的なイメージだけで移住先を決めず、データと実体験の両方で確認することをおすすめします。
  • Q. 支援金の金額が大きい地域を選べば失敗しにくいですか?
    A. 支援金の金額と暮らしやすさは必ずしも一致しません。支援制度は判断材料の一つとして活用しつつ、仕事の見つけやすさや生活環境との相性を優先して検討することをおすすめします。

出典