移住したい都道府県ランキング、なぜ調査によって違う?

「移住したい都道府県ランキング」でよく紹介されるのは、主に次の3つの調査です。それぞれ調査主体・対象者・集計方法が異なるため、同じ「ランキング」という言葉でも中身は別物と考えたほうが正確です。

  • 『田舎暮らしの本』(宝島社) 読者アンケート「移住したい都道府県ランキング」:同誌の読者を対象にしたアンケートで、2006年から毎年実施されています。
  • ふるさと回帰支援センター「移住希望地ランキング」:東京の相談窓口・セミナー参加者を対象にしたアンケートです。
  • SMOUT移住アワード:移住マッチングサイト「SMOUT」の登録ユーザーが、地域の発信情報に押した「興味ある」ボタンの数を集計したものです。

なお『田舎暮らしの本』は、この読者アンケートとは別に「住みたい田舎ベストランキング」という市町村向けの調査も毎年発表しています。こちらは自治体に対して移住支援策・医療・子育て・自然環境・就労支援・移住者数など336項目のアンケートを送り、回答内容を数値化して市町村を順位付けするものです(宝島社プレスリリースによると2025年10月末〜11月上旬に実施、547市町村が回答)。同じ雑誌名で2種類のランキングがあるため、記事によって「都道府県ランキング」と「市町村ランキング」が混同されているケースも見られます。

3つの調査方法の違い

主要3調査の比較
調査名調査主体対象者集計方法対象エリア
移住したい都道府県ランキング宝島社『田舎暮らしの本』同誌の読者読者アンケート回答の集計都道府県単位
移住希望地ランキングふるさと回帰支援センター東京の相談窓口来訪者・セミナー参加者アンケート集計(2025年は回答者19,021人)都道府県単位
SMOUT移住アワード株式会社カヤック(SMOUT運営)SMOUT登録ユーザー(2026年3月時点約9万人)地域発信情報への「興味ある」ボタン数の集計都道府県単位・市区町村単位の両方を発表

※調査の対象となる人が異なるため、同じ「移住したい都道府県」というテーマでも回答者層に偏りがあります(雑誌読者/実際に相談に来た人/マッチングサイト利用者)。

この違いを踏まえると、宝島社の調査は「移住に関心のある雑誌読者からの人気」、ふるさと回帰支援センターの調査は「実際に移住相談まで行動した人の希望地」、SMOUTの調査は「マッチングサイト上での閲覧・関心の強さ」を表していると整理できます。どれが正しいというより、見ている対象が違うと理解しておくと、ランキングの読み方が変わります。

主要ランキング結果まとめ

各調査の最新発表内容を、一次情報をもとに整理します(数値・順位は執筆時点の最新発表であり、翌年以降は変動します)。

宝島社『田舎暮らしの本』2026年版「移住したい都道府県ランキング」:長野県が1位で、2006年から20年連続の1位です(長野県公式ブログ、宝島社プレスリリース)。長野県は77市町村のうち35が村という構成で、小規模自治体それぞれが独自の魅力を打ち出している点、首都圏へのアクセスの良さ、教育環境への評価などが支持されている理由として挙げられています。

ふるさと回帰支援センター 2025年「移住希望地ランキング」:1位は群馬県、2位は栃木県、3位は長野県でした(ふるさと回帰支援センター発表)。群馬県は2024年に続き2年連続の1位で、窓口相談・セミナー参加者アンケートの両部門で1位を獲得したのは全国で初めてとされています。2025年の相談件数は73,003件で、前年比18.3%増と5年連続で過去最高を更新しています。

SMOUT移住アワード2025(年間結果):都道府県部門は長野県が1位、高知県が2位、石川県が3位でした。市区町村部門では石川県加賀市が初の年間1位、長野県伊那市が2位、長崎県新上五島町が3位でした(面白法人カヤック プレスリリース)。約9万人のユーザーが押した「興味ある」ボタン数の合計で集計されています。

  • 3つの調査すべてで長野県が上位(宝島社1位・ふるさと回帰3位・SMOUT1位)に入っており、複数の調査軸で評価が高い県であることは読み取れます。
  • 一方で1位の顔ぶれは調査によって異なり(宝島社=長野県、ふるさと回帰=群馬県、SMOUT=長野県)、「絶対的な1位」が存在するわけではありません。

「ランキング」より「自分に合う指標」で探す方法

ここまで見てきたように、ランキングは調査対象者の属性に強く影響されます。雑誌読者に人気の県、実際に相談に来た人に人気の県、マッチングサイトで注目された地域は、必ずしも「あなた自身に合う移住先」とは限りません。

自分に合う移住先を探すには、ランキングの順位そのものより、自分が重視する条件(人口動態、子育て・教育環境、医療・介護体制、災害リスク、就業機会、財政状況など)を軸に比較する方法が有効です。

アウマチでは、自治体の公的統計データ(人口移動・世帯構成・就業構造・気候平年値など)をもとに、自分が重視する指標で自治体を比較できるランキング機能を提供しています。特定の調査元が決めた順位に依存せず、自分の条件に合わせた比較が可能です。

暮らし方ごとに見る、上位に来やすい都道府県の傾向

移住検討者のライフステージによって、重視する条件は変わります。ここでは代表的な2つの傾向を紹介します。

子育て世帯の場合:学校選びの選択肢、医療機関へのアクセス、保育の受け入れ状況、子育て支援制度の充実度が重視されやすい傾向があります。長野県が「教育県」として評価されている点(長野県公式ブログ)は、この文脈で語られることが多い要素です。

シニア世代の場合:医療体制の充実度、気候の穏やかさ、生活コスト、地域コミュニティへの入りやすさなどが判断材料になりやすい傾向があります。同じ「人気の都道府県」でも、重視するポイントが違えば候補地の優先順位は変わります。

また、テレワーク移住を検討する層では、ネット回線の安定性や都市部へのアクセスのしやすさ、単身向け住宅の有無が重視される傾向があります。起業・地域おこし協力隊経由での移住を検討する層では、就労支援制度や創業支援金の有無が判断材料になります。

同じ「移住したい都道府県ランキング」の上位県でも、注目されている理由は望む暮らしによって異なります。順位だけでなく、その県が評価される理由も確かめると、自分に合うか判断する材料が増えます。

ランキング上位=自分に合う、とは限らない注意点

ランキング上位であることは「多くの人からの関心が高い」ことを示しますが、「あなたにとって暮らしやすい」ことを保証するものではありません。人気の高いエリアは移住者の流入も多く、地域によっては物件確保の競争が生じている場合もあります。

また、移住支援金の金額の大きさだけで移住先を決めるのはリスクがあります。支援金は多くの場合、就業要件や定住年数などの条件が細かく設定されており、金額の多寡だけでなく条件を満たせるかどうかの確認が欠かせません。

加えて、宝島社の「移住したい都道府県ランキング」は読者アンケートに基づく人気投票的な性質を持ち、必ずしも実際の移住者数や定住率と一致するとは限りません。人気と実際の移住のしやすさは別の指標であることを踏まえておくと、ランキングに振り回されにくくなります。

  • 支援金の対象要件(直近の居住地・就業先・定住年数など)を必ず確認する
  • 人気エリアは物件確保や地域コミュニティへの参加のしやすさに地域差がある
  • ランキングの調査年・調査対象は毎年変わるため、最新の発表内容を確認する

市区町村単位のランキングも見たい場合

都道府県単位のランキングだけでなく、市区町村単位で移住先を探したい場合は、SMOUT移住アワードの市区町村部門(前述のとおり2025年年間は加賀市が1位)や、宝島社の「住みたい田舎ベストランキング」(市町村を人口規模別に8グループへ分け、総合・若者世代単身者・子育て世代・シニア世代の4部門で発表)が参考になります。ただし、いずれも調査対象・集計方法が異なるため、都道府県ランキングと同様に「なぜその順位なのか」を確認したうえで参考にすることをおすすめします。

自分に合った移住先を具体的に探すには

ランキングで気になる地域が見つかったら、次のステップとして自治体ごとの支援制度や生活環境を具体的に確認していくことになります。移住先が決まった後は、電気・ガス・ネット回線などの新生活インフラの切り替えや、引っ越し業者の比較検討も必要になります。

よくある質問

Q. ランキング1位の県に住めば失敗しない?
A. ランキング1位は「多くの人からの人気・関心の高さ」を示す指標であり、個人の生活条件との適合を保証するものではありません。人口動態や子育て・医療環境など、自分が重視する条件で個別に確認することをおすすめします。

Q. 市区町村ランキングも見るべき?
A. 都道府県単位のランキングだけでは市区町村ごとの違い(支援制度の有無、生活インフラの状況など)は見えません。移住先を具体的に絞り込む段階では、市区町村単位のランキングや自治体別のデータも合わせて確認することをおすすめします。

Q. なぜ調査によって1位の県が違うの?
A. 調査対象者が「雑誌読者」「移住相談の来訪者」「マッチングサイトの利用者」など異なるためです。それぞれ別の集団の関心を反映しているため、順位が一致するとは限りません。

出典