移住×仕事、まず4つの道を整理する

地方移住を考えるとき、多くの人がまず直面するのが「仕事をどうするか」という問題です。大きく分けると、地域おこし協力隊になる、地方の企業に転職する、今の仕事を続けながらリモートワークで移住する、移住してから起業する、という4つの道があります。各選択肢の全体像と暮らし方に合わせた選び方は、移住と仕事の4つの選択肢ガイドで整理しています。

このうち地域おこし協力隊は、総務省が所管する制度です。都市部から条件不利地域へ住民票を異動し、自治体からの委嘱を受けて地域おこし活動に従事する仕組みで、給料の内訳や任期後の進路まで含めた制度の詳細は、地域おこし協力隊 完全ガイドで解説しています。本記事ではこの協力隊自体の制度説明は繰り返しません。

本記事で扱うのは、この協力隊を除いた「地方求人ルート」です。協力隊は住民票の異動が前提で、対象自治体も条件不利地域に限られるため、選べる人が限定されます。転職に近い形で地方の仕事を探したい人、あるいは今の仕事を続けたまま移住したい人にとっては、協力隊以外にも複数の現実的な道があります。

協力隊以外の地方求人ルートを4タイプで整理

協力隊以外の地方求人ルートは、運営主体で大きく4タイプに整理できます。まず全体像を比較したうえで、次のセクションから一つずつ詳しく見ていきます。

協力隊以外の地方求人ルート 4タイプ比較
タイプ運営元対象条件の目安向いている人
① 移住支援金対象マッチングサイト都道府県東京圏在住・通勤要件+就業先の要件を満たす必要あり移住支援金を活用したい人
② 地方特化型の転職エージェント・転職サイト民間企業利用条件は各社の登録規約による業界・職種にこだわりがある人
③ ハローワーク・自治体窓口厚生労働省・都道府県制限なし(無料)公的支援を軸に慎重に探したい人
④ リモートワーク移住(転職しない道)現在の勤務先現職がフルリモート対応であること収入の安定を最優先したい人

※各制度・サービスの詳細な対象条件は変更される場合があります。最新情報は必ず各公式サイトでご確認ください。

特に①のマッチングサイト経由の就業は、移住支援金の対象になるかどうかに直結する重要なルートです。次のセクションで、内閣官房の公式情報をもとに就業要件を整理します。

移住支援金の対象になる転職ルートを理解する

移住支援金(国の制度、正式名称「地方創生移住支援事業」)は、東京圏から地方へ引っ越すだけでは対象になりません。就業・起業・テレワーク継続のいずれかの要件を満たす必要があり、就業で対象になる場合はさらに3つのパターンに分かれます。内閣官房「地方創生」公式サイト・リーフレットの情報をもとに整理します。

  • ①マッチングサイト掲載求人への就業:移住先の都道府県が運営する移住支援金対象求人サイト(マッチングサイト)に掲載された求人に応募し、就業すること。週20時間以上の無期雇用契約であること、転勤・出向・出張等ではなく新規の雇用であること、支援金の交付申請日から5年以上継続して勤務する意思があることが要件とされています。
  • ②プロフェッショナル人材事業を利用した就業:内閣府地方創生推進室が実施するプロフェッショナル人材事業を通じて就業した場合。就業先が対象都道府県内に本店・事業所を持つ法人であることに加え、①と同じ「週20時間以上の無期雇用契約であること」「新規の雇用であること」「5年以上継続して勤務する意思があること」の3つの要件を満たす必要があります。
  • ③先導的人材マッチング事業を利用した就業:地域金融機関等が経営人材のマッチングを行う先導的人材マッチング事業を通じて就業した場合。要件は②のプロフェッショナル人材事業とほぼ共通です。

いずれのパターンも「週20時間以上の無期雇用契約」「新規の雇用であること(転勤・出向ではない)」が共通の軸になっています。逆に言えば、一般の転職サイトやハローワーク経由で地方企業に就職しただけでは、この3パターンのいずれにも該当しない限り、就業要件としては移住支援金の対象にならない可能性があります(自治体・年度により運用が異なる場合があるため要確認、移住先自治体の窓口で個別に確認することをおすすめします)。

①のマッチングサイトは、内閣官房が公開している「ふるさと求人マップ」から都道府県別にたどることができます。例えば長野県は独自の求人掲載ページを運営しており、対象求人・掲載企業の要件は都道府県ごとに設定されています。マッチングサイトの有無や掲載求人数は都道府県によって差があるため、移住先候補が決まったら、まずその都道府県のマッチングサイトを確認するとよいでしょう。

転職先を先に決めてから移住支援金の対象可否を調べると、実は対象外だったというケースも起こり得ます。移住支援金の活用も視野に入れる場合は、転職活動と並行して、移住先候補の都道府県マッチングサイトに掲載されている求人かどうかを早い段階で確認しておくことが大切です。移住支援金の金額の詳細や申請条件は、移住支援金 完全ガイドでも解説しています。

地方特化型の転職エージェント・転職サイトの選び方

移住支援金の対象にこだわらず、まず地方の求人情報を広く集めたい場合は、転職サイト・エージェントの活用が中心になります。

転職サイト・エージェントには、全国の求人を幅広く扱う大手と、特定の地方・業界に絞って非公開求人を保有する地域特化型があります。地域特化型は地元企業とのつながりが深く、求人票だけではわからない社風や条件を担当者から聞ける場合がある一方、扱う求人の絶対数は大手より少なくなりがちです。

転職エージェントは1社に絞らず、複数登録して比較するのが基本です。担当者との相性や、非公開求人の紹介状況はサービスによって差があるため、実際に使ってみないとわからない部分があります。

また、地方の求人は都市部に比べて絶対数が少なく、特に専門職や特定業界では選択肢が限られることがあります。移住してから転職活動を始めるより、希望する業界・職種の求人が移住先候補にどの程度あるかを事前にリサーチしておくと、移住後のミスマッチを避けやすくなります。

サービス選びで気をつけたいこと

  • 転職エージェント・転職サイトの対応エリア、扱う求人数、非公開求人の傾向は各社で異なり、内容も変わりやすいため、比較検討する際は各社の公式サイトで最新情報を確認してください

{アフィリ商材: 地方転職エージェント} — 地方企業の求人を専門に扱うエージェントに複数登録しておくと、非公開求人も含めて比較の幅を広げやすくなります。

公的機関・自治体窓口を使った探し方

民間サービスに加えて、公的機関・自治体窓口も地方求人を探す実務的な選択肢です。

厚生労働省は東京・大阪のハローワークに「地方就職支援コーナー」を設置しています。専門の相談員が地方就職に関する職業相談・職業紹介を行うほか、全国のハローワークに寄せられた求人の中から希望に合うものを紹介してもらえます。地方就職に関する合同面接会の開催情報も入手できます。

また、多くの都道府県が、地元企業の求人紹介やUターン・Iターン就職の相談を行う窓口を設置しています(窓口の名称・体制は都道府県によって異なります)。移住先候補が決まったら、その都道府県の移住ポータルサイトや雇用担当部署のページで、求人紹介窓口の有無を確認するとよいでしょう。「ニッポン移住・交流ナビ JOIN」(運営:公益社団法人ふるさと回帰・移住交流推進機構)の求人情報ページでも、地域別の求人が確認できます。

移住相談窓口(常設窓口・移住フェア等)は、仕事の紹介だけでなく住まい・子育て・医療など生活面の相談も一括でできるのが特徴です。相談窓口の種類・使い分け方は、移住フェア完全ガイドで詳しく解説しています。

リモートワーク移住という選択肢(転職しない道)

「転職せずに移住する」という道もあります。今の仕事を続けながらリモートワークで移住するケースで、移住と仕事の4つの選択肢ガイドで紹介した調査でも、フルリモート勤務者の過半数が「フルリモートで働ける仕事であること」を移住実現の条件として最も重視していると報告されています。つまり、今の仕事がフルリモートで完結できるかどうかが最大の分かれ目になります。

  • 会社の就業規則でリモートワーク・転居がどこまで認められているか確認する
  • 移住先候補の通信インフラ(光回線の提供エリアかどうか)を事前に確認する
  • 月1〜数回の出社が必要な場合、最寄りの新幹線・空港へのアクセスを確認する

リモートワーク移住は、移住支援金の対象にもなり得ます。移住支援金には「テレワーク要件」があり、勤務先からの命令ではなく自己の意思で移住したこと、移住先を生活の本拠とすること、移住先で原則として恒常的に通勤しないこと、週20時間以上テレワークに従事することなどが目安とされています。反対に、勤務日数の5分の1を超えて元の勤務先へ出張する場合や、勤務先から通勤に関する費用補助(通勤手当等)を受けている場合は、テレワーク要件に該当しないとされている点に注意が必要です(自治体・年度により運用が異なる場合があるため要確認)。

暮らし方に合わせたルートの選び方

4つのルートのうち、どれから検討すべきかは、優先したいことによって変わります。

暮らし方と仕事のルートの相性の目安
優先したいこと相性が良いルート理由
業界・職種にこだわりがある地方特化型エージェント非公開求人や業界特化の情報を得やすいため
収入の安定を最優先したいリモートワーク移住現職を継続できれば収入面の変化が最も小さいため
移住支援金を最大限活用したいマッチングサイト経由の就業就業要件を満たしやすく支援金の対象になりやすいため
公的支援を軸に慎重に探したい自治体窓口・ハローワーク併用無料で使え、生活相談も一括でできるため

※あくまで傾向です。複数のルートを同時に検討し、比較しながら絞り込む人も多くいます。

よくある質問(FAQ)とまとめ

  • Q. 転職しないと移住支援金はもらえない?
    A. もらえないとは限りません。移住前の仕事をテレワークで継続する要件を満たせば、転職せずに対象になる場合があります。
  • Q. 地方特化型のエージェントは無料で使える?
    A. 一般的に求職者側の登録・利用は無料としているサービスが多いですが、費用体系はサービスによって異なるため、利用前に各社の公式サイトで確認してください。
  • Q. 協力隊と転職、両方検討してもいい?
    A. 問題ありません。協力隊の任期中に転職活動を並行して検討したり、協力隊を経ずに直接転職ルートを選んだりと、組み合わせ方は人によって様々です。協力隊自体の制度詳細は地域おこし協力隊 完全ガイドをご覧ください。

「地域おこし協力隊以外」にも、移住支援金の対象になるマッチングサイト経由の就業、地方特化型エージェント、公的機関、リモートワーク移住という複数の道があります。自分が何を優先するか——収入の安定か、業界へのこだわりか、支援金の活用か——から逆算してルートを選ぶことが、移住後のミスマッチを防ぐ近道になります。

出典