気になる街は、どこにある?
このテーマの街を見てみよう
このテーマの解説・移住前に知っておきたいこと
つなぐ棚田遺産は、どんな棚田を選んでいる?
「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」は、農林水産省が棚田を選び、認定する制度です。美しい景色、雨水を一時的にためる防災の働き、さまざまな生き物の環境を守る働きなど、棚田が持つ価値を評価します。地域の人が棚田を守る活動も、評価の対象です。
前身は、1999年7月16日に選ばれた「日本の棚田百選」です。全国117市町村の134地区が選ばれ、棚田の景色を地域で守るべきものとして、広く伝える取り組みになりました。
棚田百選から20年以上を経て、その後継として設けられたのが「つなぐ棚田遺産」です。2022年2月14日に農林水産省の委員会が271地区を選び、同年3月25日に正式に認定しました。
認定棚田一覧によると、271地区は44道府県に分布しています。都道府県別では新潟県が36地区と最も多く、なかでも十日町市は14地区、佐渡市と上越市はそれぞれ7地区が認定されており、1つの市区町村に複数地区が集中している例も少なくありません。
農林水産省の公式サイトでは、つなぐ棚田遺産は日本の棚田百選の後継(ポスト棚田百選)として位置づけられていると説明されています。名称・選定年・選定地区数は制度ごとに違うため、両者を混同しないよう注意してください。
季節の景色と、農作業を通じた出会い
棚田のある街の大きな楽しみは、季節で変わる景色を日々眺められることです。田植えのころに水面へ映る空、夏の緑、秋の実り、冬の雪景色などが、暮らしの一部になります。新潟県十日町市の星峠、長野県千曲市の姨捨、石川県輪島市の白米千枚田など、観光で知られる棚田のある街もあります。姨捨は「田毎の月」として知られる、月の名所です。
地域によっては、都市住民向けの棚田オーナー制度を設けている地区もあります。田植えや稲刈りなどの農作業を通じて地域住民と交流できる機会となる場合がありますが、募集の有無や料金・活動内容は地区ごとに違うため、興味のある棚田がある地区にそれぞれ確かめる必要があります。
棚田を守る活動が、地域の人のつながりの中心になっている地区もあります。「江ざらい」と呼ばれる水路の泥上げや、田んぼの畦の草刈りを一緒にして、移住した人と昔からの住民の距離が縮まる場所も見られます。ただし、つながりの深さや関わり方は地区ごとに違います。
棚田を核とした移住・定住施策に取り組む自治体もあります。空き家バンクや古民家活用と組み合わせて、棚田のある集落への移住を後押しする取り組みが見られますが、制度の有無や支援内容は自治体ごとに違うため、公式サイトや移住相談窓口での確認が欠かせません。
棚田で育てられた米が地域ブランド米として流通している地区もあり、農業を軸にした暮らしや、直売所・農家民宿など棚田を活かした小規模ななりわいに興味がある人にとっては候補になりやすいエリアといえます。
共同作業や、買い物・通院の距離は?
つなぐ棚田遺産に認定されている地区の多くは、山間部や中山間地に位置しています。スーパーや病院までの距離、公共交通の運行本数、冬季の道路事情など、都市部とは異なる生活インフラの事情があるため、事前の確認が欠かせません。
棚田の景色は、地域の人が手をかけ続けることで守られています。移住後に、水路の泥上げや畦の草刈りなどへ、住民の一人として参加を求められる場合があります。作業の回数や負担は地区ごとに違うため、住む前に地域の習慣を聞いておくとよいでしょう。
中山間地に立地する棚田地域では、イノシシやシカなどによる獣害への対策が課題になっている地区もあります。防護柵の設置や維持管理が必要になる場合があり、対策の状況は地域や作物によって差があります。
空き家や古民家を取得して棚田のある集落に暮らす場合、建物によっては改修に費用がかかることや、農地の取得には農地法に基づく農業委員会の許可が必要になることもあります。手続きの詳細は自治体・農業委員会ごとに違うため、一つずつ確かめてみてください。
積雪地域の棚田地区では、冬場の除雪や凍結への備えも必要です。傾斜地特有の生活で使う道(坂道の多さ、車の運転など)も日常生活に関わるため、実際に現地を訪れて季節ごとの暮らしをイメージしておくことが大切です。
棚田と、どんなふうに関わりたい?
棚田のある街への移住を考えるときは、まず生活インフラの確認が欠かせません。病院・スーパー・学校までの距離、公共交通の運行本数、冬季の除雪状況など、日常生活の利便性を実際に確認しておくことが大切です。
景色を楽しみたいのか、棚田オーナー制度で田植えや稲刈りを体験したいのか、住民として保全活動を続けたいのか。棚田との関わり方によって、合う地区も変わります。どんな時間を過ごしたいかを考えることが、街を選ぶ大切なポイントです。
移住支援制度の有無や内容も確認しておきたいポイントです。空き家バンクや移住相談窓口を設けている自治体もありますが、制度の有無・内容は自治体ごとに異なります。候補地を絞り込む段階で、複数の自治体の移住支援制度を比較しておくと、暮らしのイメージがより具体的になります。
農地や古民家の取得を考えている場合は、農地法に基づく取得要件や、建物の改修にかかる費用の見通しを早い段階で自治体の農業委員会や移住相談窓口に相談しておくと、移住後の計画が立てやすくなります。
同じ「棚田のある街」でも、海に近い地区と山あいの高原地区では気候や暮らし方が大きく違います。気象庁の気候データや、実際にその地域で暮らす住民・移住者の声を集めておくことをおすすめします。
棚田を守る制度と、短く滞在する選択肢
棚田を守るための別の制度に、2019年に成立し、同年8月に施行された「棚田地域振興法」があります。人口の減少や高齢化で守ることが難しくなった棚田を、国民の貴重な財産として扱い、棚田のある地域を元気にすることを国の責任と定めた法律です。
この法律では、都道府県の申請を受けて国が「指定棚田地域」を指定し、地域を活性化する事業を後押しします。「つなぐ棚田遺産」とは別の制度で、指定する範囲も違います。両方の対象が必ず一致するわけではないことに気をつけてください。
棚田地域振興法は当初、時限立法として制定されました。法律の有効期限や延長の有無、指定棚田地域の最新の指定状況については、農林水産省や候補地の自治体の公式情報で確かめてみてください。
近年は、二拠点居住や農泊、関係人口の受け入れといった暮らし方の広がりにあわせて、棚田を拠点の一つとして活用する動きも見られます。認定NPO法人棚田ネットワークのように、つなぐ棚田遺産の情報発信や地域間の交流を支える団体もあります。取り組みの有無や内容は地区ごとに違うため、移住・二拠点居住を検討する際は候補地の自治体や地域団体に個別に問い合わせることをおすすめします。
よくある質問
- Q. つなぐ棚田遺産と日本の棚田百選は同じものですか? / A. 別の選定です。日本の棚田百選は1999年に117市町村・134地区が選定されました。つなぐ棚田遺産はその後継(ポスト棚田百選)として2022年に271地区が選定・認定された、新しい制度です。
- Q. 棚田のある街に移住すると、棚田の維持作業に参加する必要がありますか? / A. 地区の慣習によります。江ざらいや畦の草刈りなど共同作業への参加を求められる地区もあれば、そうでない地区もあります。移住者に保全活動への参加が制度上義務付けられるものではなく、あくまで任意です。ただし地域の共同作業の慣行は地区によって違うため、作業の頻度や負担は移住前に地元の自治会や農業組合に確認しておくことをおすすめします。
- Q. 棚田オーナー制度とはどのような仕組みですか? / A. 都市住民などが田植え・稲刈りといった農作業に参加できる制度で、地域住民との交流の機会にもなります。募集の有無や料金、活動内容は地区ごとに違うため、興味のある棚田を持つ自治体や地区の窓口に個別に確認してください。
- Q. 棚田地域振興法の「指定棚田地域」とつなぐ棚田遺産は同じですか? / A. 別の制度です。指定棚田地域は棚田地域振興法に基づき都道府県の申請で国が指定する地域、つなぐ棚田遺産は農林水産省が選定・認定する顕彰制度で、指定・選定の単位が異なります。混同しないよう注意してください。
- Q. 農地や古民家を取得する際に注意することはありますか? / A. 農地の取得には農地法に基づく農業委員会の許可が必要になる場合があります。古民家の改修費用の見通しも含め、早い段階で自治体の農業委員会や移住相談窓口に相談しておくと計画が立てやすくなります。
出典
- 農林水産省 つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~の認定について (参照: 2026-07-17)
- 農林水産省 認定棚田一覧(PDF) (参照: 2026-07-17)
- 農林水産省 つなぐ棚田遺産(ポスト棚田百選)の実施について (参照: 2026-07-17)
- 農林水産省 日本の棚田百選(PDF) (参照: 2026-07-17)
- e-Gov法令検索 棚田地域振興法 (参照: 2026-07-17)